走って、走って、ときどき海遊び

ラスコです。人生3分の2を終え残りは、ジョギングで走って、ロードバイクで走って、ときどき釣りとウインドサーフィン.....

今週のお題:「心に残った本」

自分の記憶に残る面白かった、何度も読みたい本は、
武者小路実篤の「友情」、
ドラッカーの「抄訳マネジメント」、
ケストラーの「ホロン革命」
の3冊だ。

古いね。人間古いもんで。
絶版で手に入らないモノもあるけど新訳があるから大丈夫。


「友情」は高校2年の時に文庫本を読んだ。
風邪を引いて学校を休んで2日目でだいぶ回復して元気も出てきたとき、病院の帰りに暇つぶしになるものないかなと書店に寄った。
この書店ではいつも少年マガジンを買うだけだったけど、暇つぶしにあれこれ見ていたら今までに見たこともない文庫本を見つけた。講談社文庫だ。
今までの文庫本はわら半紙のような紙質でページ上部は真っ直ぐに裁断されておらずちょっと汚い見た目だったのが、小奇麗な講談社文庫が目を引いた。
まだ出版され始めたばかりでラインナップも少ないためだったため選ぶのが楽だった。
その中からページ数の少な目ですぐ読めそうな本として選んだのが「友情」だ。

高校生にふさわしい内容で面白さに一日で読み終わって、翌日の学校帰りに同じ書店に寄って同じく武者小路実篤の「愛と死」を買って帰った。
夕方になって部屋が暗くなるのも気づかずに読みふけった事を覚えている。
本を読む楽しさを知ってボクの読書生活の始まりだった。

何十年ぶりかで読んでみたことがあったけど、高校生の時に読んだ感動を味わうことはできなかった。
今は高校生の頃の感受性は残っていない。 読むべきにふさわしい時期があるのだろう。
本との出逢いは一瞬しかないことを痛感する。


ドラッカーの「抄訳マネジメント」は大学の経営学の授業のテキストとして出会った。
抄訳というのは要約版ということだ。本家の「マネジメント」はB5版で800ページ程のが2冊組。値段も結構してた。

最初の授業で「会社の目的はなんですか」と質問され、誰もが利益の追求とか利益の極大化と答えていたのに一括否定された。
これからみなさんが学ぶドラッカーは企業の目的とは「顧客の創造」と言っています。
なんだか意味が分からないが儲けること以外に会社の目的があるという考え方に、全く思いもつかない考え方があることに感動し、頭を殴られたような震える感覚を持ったことを憶えている。
儲けるとかどうとかは会社を経営した成果として現れることで目的ではない。目的はその会社が提供する物品であったりサービスを受け取るお客としての顧客を得ることにある。
なんだかわかったようなわからないような。目的と手段の履き違えにも通じる。
お金はあくまでも手段であって人の欲望で、会社そのものが目的とすることではない。
会社経営にお金が必要ないわけではないが、それは決して目的ではない。
この考えに魅了された。


ケストラーの「ホロン革命」は、ドラッカーによって開かれた経営学の面白さを追求していく中で、組織論的な物の見方を知り手にとった本だ。
和製英語でニューサイエンスという言葉が使われるようになった頃、その手の本をもっぱら出版していた工作舎で扱っていた本だ。
大手の書店に行けば専用のコーナーが作られていた。
数年前には「複雑系の科学」などと言う呼び名も出てきた。

物事を理解しようとするときに構成された要素に分割し、分割した単位毎に理解し最終的に分割した単位を合計すれば物事は理解できる。とするこれまでの科学的な見方に対して、全体には全体固有の動きがあり分割した部分を合計しても全体を知ることはできないとする考え方を提示している。全体概念、組織論的アプローチなどといった考え方だ。


自分の記憶に残るこの3冊は、今まで自分の知らない世界への目を開かせてくれた本だった。
頭をガツンと殴られるような感動を与えてくれる本にここ十数年めぐり合っていない。
アマゾンで手軽に本が買える様になったというのに、感動はそれに伴っていないようだ。
新しいことへの好奇心が少し億劫になっていないか、 本選びの方向性を少し変えてみるのもひとつの解決法だろう。