今日は暑さも一段落。ずいぶんと楽です。
温度を見たら29度台。月曜から暑さもぶり返すようだけど、殺人的暑さの峠は過ぎたかな。
8月初めに録画しておいた、生田斗真さん主演の映画「人間失格」を観た。
太宰治の小説をもとにした10年ほど前の作品だが、映画の出来としてはかなり辛口になってしまうかな。
登場する人物やシーンが唐突で意味がよくわからない。小説を読んでない人には全く意味不明な映画になってしまうかもしれない。
これと言った盛り上がりもなく淡々と時が過ぎていく。飽きちゃった人もいるだろうな。
Yahoo!の映画評価でも5点満点で2.2点とかなり辛口評価。
途中何度も観るのをやめようと思ったが、青春時代の愛読書だった「人間失格」なので、一応最後まで観ることにした。
太宰治の「人間失格」を初めて読んだのは高校生の頃だった。
47年前だ。
当時は講談社文庫が出初めの頃で、あまり作品が揃っていないことから逆に選びやすかった。
当時の他の文庫本はワラ半紙のような紙質で、本の上辺もきちんと裁断されずバラバラ。それに対して講談社文庫は紙質もよく、上辺も真っ直ぐに裁断され小奇麗。武者小路実篤、太宰治、夏目漱石などを手にとって次から次に読んでいった。
武者小路実篤氏の「友情」。この本は高校2年の頃に一度読んだっきりだけど。読書することの楽しさを味わった本なので当時の文庫本を取ってある。一度しか読んでいないから綺麗なままだ。
本を手に取ると寝っ転がって読んでいた当時の格好まで思い出す。後少しで読み終わるところで夕飯の時間となり、夕飯を遅らせてでも読み終わらせたことを覚えている。翌日の学校帰りにすぐに同じ作者の本を買いに行ったんだな。
「人間失格」は読み始めると、どうしようもなくやりきれない気持ちにさいなまれる。精神状態を谷底まで落とし込まれるようだ。
それがどういうわけか、終わりに近づくとムクムク元気が出てくる。落ちる所まで落ちきったら、後は上昇するしか無いだろうということか。
それ以後30代半ばまで、勉強がうまく行かなかったり、失恋したり、仕事がうまく行かなかったり、失恋したり。そういう落ち込むたびに「人間失格」を読んできた。
10回とは行かないまでも、それに近い回数読んだろう。心がつかれたときに読むんだ。そのたびに落ち込んだ気持ちを持ち直して、翌日にはすっかり元気になっていた。
ビタミン剤のように元気になる本、と言ったたぐいの本ではないだけに不思議な小説だ。
不思議といえば、そんなに何度も読んでいながらストーリーを全く覚えていないことだ。数年に一度のペースで読むのに、毎回初めて読むかのように次のシーンが全く思いつかない。だから、どんな結末なのかも覚えていない。
読んでいても最後の方になると、自分の高揚感ばかりが上回って物語から気持ちが離れてしまっているようだ。
高校2年のときに、本を読むことを覚えて、思い出のある本はダンボール箱に仕舞っておいたので、ダンボール箱を探してみたが「人間失格」は見つからなかった。
こんなに思い入れのある本なのに、なぜ見つからないのか…..。
そうだ、そうだ。思い出したぞ。
もう、この本は必要なくなったな。と捨ててしまったのだ。 深い思い入れがあっただけに、取っておいて、かつての苦悩の時代を思い出したくなかったんだ。だから捨ててしまった。
思い返すと、「人間失格」が自分の弱い気持ちを鍛えてくれたような気がする。 だから、30代半ば以降何にも迷いがなくなった。
昨日は、男の更年期障害のけがあると話したが、症状のうちに精神的な面でのうつ状態とか、悩むとか、そういうこともあるようだが、自分には精神面での弱気は一切ない。
散々苦悩の青春時代を過ごしてきて、うまくいなしていく術を獲得していったのでしょう。