走って、走って、ときどき海遊び

ラスコです。人生3分の2を終え残りは、ジョギングで走って、自転車で走って、ときどき釣りとウインドサーフィン.....

今週のお題:「人生最大のピンチ」


今週のお題「人生最大のピンチ」。書くのどうするかずいぶん迷ったけど記録しておこう。1年半前にウインドサーフィンで遭難した話だ。

2009/12/12(土)
昨日まで2泊で関西出張。たった2泊でもホテル泊は疲れがたまる。金曜日はホテルからチェックアウトして着替えなどの荷物入りバッグを持ち片手は傘。快晴の空の下、逗子で過ごす週末を思えば重い荷物もトレーニングの一貫だと割り切れる。
しかも注文したHAWK135の受け取り日だ。これまで何回も試乗しているが自分の持ち物として乗れるのかと思うと気持ちもはやる。


7時に家を出る。いつもは電車の時間に合わせて7時10分に出発するのに待ちきれなくて早めに家を出てしまった。
明け方まで降っていた雨でアスファルト道路は黒く光っている。シーンとした空気が気持ちを引き締める。12月中旬とはいえ20度近くの暖かい陽気になると言うが、朝のうちは横須賀線に乗っていてもジーンズの太ももが薄ら寒い。


風予報だと北寄りの風4,5mと、のんびりセーリングにはまずまず。昨日までの疲れが残っているだろうから、今日はのんびり過ごしたいのでスクールは受けないことにした。ボードに付属した46cmのフィンとJPボードのときに買った42cmのフリーライドフィンを試したいこともある。

shopでボードを受け取り早速浜に持っていく。早く乗りたい。はやる気持ちを抑えきれず準備運動も軽く済ませ海上に向かった。何回も試乗しているから分かっていることだけど、135 Lもあるくせして6.9kgと軽量。持った瞬間に軽さを感じる。
沖合では8.0ぐらいのラージセイルの人がプレーニングしている。冬場は朝のうちだけ吹いて昼過ぎには無風になることが多い。特に今日は20度近くの気温になって北寄りの風を打ち消してしまうだろう。早めに行って帰ってくるのが良いだろう。
今までの120Lに比べ浮力があるせいでビーチスタートもふらつくことなく楽に出来る。
ボード幅が今までのJPより3cm広くなって73cm。わずかに数センチとは言ってもデッキが広々して安定感がある。とは言っても慣れないせいか土踏まずが張って窮屈さを感じたけど、しばらく乗っていたら慣れてきた。
今日は7.0を張った。ジョイントエクステンションのベースをセイル指示より2穴上にした。前回みたいに長さが足りなくてダウンが引き切れないなんてことにはならないように。
プレーニングできる風も吹いているようだから、ブローで前に飛ばされるなんてへまはしてられない。慎重にセイルのたるみ具合を見ながらダウンを引いた。
ボードの安定感から来るのか、セイルセッティングがうまくいったのか軽くブローが入ってきてもぐらつくことなく安定して走れる。
スクールが始まる前の空いた海上。湾の中央を目指して進む。前後足の加重を変えると素直にボードが動いてくれて小気味よい。


JP120Lに42cmのフィンを付けているととろい感じがしたのに、同じフィンでもHAWK135ではきびきびしている。
一旦上らせてクローズドで走りハーネスラインの位置調整。プレーニングの半歩手前までだったけど安定して走ってくれる。
気持ちに余裕が出てきた。富士山が綺麗に見える。伊豆半島の建物一軒ずつでも見えるほど澄んだ空だ。
今日は最高のコンディションでリフレッシュできると大喜びでいた。
遠く沖合を見ると湾口でプレーニングしている。どうしよう、行ってみるかな。
冬場は湾口手前に定置網がある。冬場のオフショアでひとりで湾外まで行ったことはない。でもこのボードだったら多少風が落ちても安定して帰ってこれるだろう。
行ってみるか。ああ、これが地獄の始まりでした。でも本当の地獄を見なくてすんで良かった。


10時半に出艇して30分湾内を行き来した。タックもジャイブも安定して出来てスピードも良く出る。上機嫌で湾口を目指した。
風が落ち始めたらすぐ帰ればいい。と言い聞かせたのに、帰るタイミングが遅かった。湾の外に出ているうちにみるみるうちに風はなくなっていった。
12時近くになってやばいかなと浜を目指して上り始めた。風が東に振れ始めた。湾内にいるときは東に振れると西浜に帰るのに便利だ。ところが湾外に出てしまうと湾を目指すのにオフショアの風を真っ正面から受けるようになるので上ってもなかなか湾内に入れない。


さらに風はなくなる。もう1時を過ぎた。
のど渇いた。腹減った。ほとんど無風になってしまい、さらに沖合にいるディンギーも漂っているだけ。無駄に体力を使ってもしょうがない。セイルを置いてしばらく待つことにした。その間も徐々に沖合に流されている。
湾口の赤灯台が遠くなっていく。近くにいたディンギーの方がオールでこいでいくからロープで曳航してあげるよと言ってもらいお世話になることに。
15分くらいすると海面が細かく波立ち始めオフショアが吹き始めた。これで大丈夫とディンギーの方にはお礼を言って別れた。
それからしばらく3m程度の風があったので赤灯台を目指して上り始めた。ところがいくらタックを繰り返しても近づかない。腰も痛くなってきた。


時間は2時過ぎ。自分より沖合にはウィンドサーフィンはいない。少し焦り始める。しばらくすると風はなくなった。また漂い始めさらに沖に流される。
海岸から見るよりも赤灯台がちっちゃく見える。
3時を過ぎても同じ状態。のどが渇いた。海水を飲んだ。
どうしようといっても何にも考えが浮かんでこない。ハーネスをはずしてボードに腹ばいになって腕で漕いでも対して進みもしない。気力が萎える。体力を温存しておこう。


4時になっても同じ。日は傾き空はオレンジ色になり伊豆の山間に隠れそうな位置まで下がってきた。後30分もしたら隠れて真っ暗になるのか。3時過ぎから自力で帰るのは諦めて腕を振って救助を求めることにした。周りには船も何もいない。
逗子マリーナの前あたり、 逗子湾からこちらの姿は見えないのか。セイルをたてていた方が目立つのではと立ち上がってはみたものの握力がなくなってブームを持ちきれない。
もうほとんど薄暗くなり始めたとき、逗子マリーナの方からボートが近づいてくるのが見えた。なんと心地よいエンジンの音。一直線で向かってくる。


逗子マリーナの者ですが、沖合に漂っているとの通報が消防よりあったので来ました。救助受け入れますか。と質問され、お願いすることにした。
ボードとリグをはずしボートに乗せ逗子湾に向かった。赤灯台の湾口に着くまでいったい何分かかったか。湾内の定置網のブイがかろうじて分かるほどに日は暮れていた。岸近くまで来ると、途中連絡を入れていただいた艇庫のレスキュー艇が迎えに来てくれた。ボード一式を載せ替え、5時近くに浜に着いた頃にはあたりは真っ暗。
後片付けをして着替え、まずは通報を受けた消防署に電話をして名前と住所を告げる。その後、艇庫の方に車を飛ばしてもらって逗子マリーナと消防署にお詫びとお礼の挨拶に出掛けた。


日常生活からあまりにかけ離れた、大変な一日を過ごしてしまいました。帰りの電車でも疲れているのに腰が痛くて爆睡することも出来ませんでした。
差し障りがあるかと思いお名前は出しませんが、たくさんの方にご迷惑をおかけし、そして助けてもらいました。一日たった今になって余計に怖さがよみがえります。